お久しぶりです。もと地方公務員で入札契約担当の部署に7年いたヒジリです。
このページでは委任契約について解説します。
委任契約ってよく聞くけど、どういう契約なのかしら?
請負契約とは何が違うの?
こんな職員さんのための記事です。
委任契約は、自治体でも頻繁に締結されている典型契約(民法に定めのある契約)のひとつです。
委任契約とはどのような契約なのか、また委任契約とよく比較される請負契約との違いについてわかりやく解説していきます。
それでは見ていきましょう。
委任契約
委任契約とは?
民法643条では、委任契約を次のように定義しています。
- 当事者の一方が法律行為を行うことを相手方に委託し、
- 相手方がこれを承諾することによって効力を生じる契約。
契約は、当事者の一方の申込みに対して、相手方が承諾することによって成立しました。
委任契約では、当事者の一方が相手方に「自分に代わって法律行為をして欲しい」という申込みをし、相手方がこれを承諾することで成立します。
法律行為とは、法的拘束力を持つ権利や義務を発生または消滅させたりする行為のこと。
委任契約の具体例
民法の定義だけでは分かりにくいと思うので、委任契約の具体例をみてみましょう。
- 訴訟代理人を弁護士に任せる契約(訴訟代理人とは、本人に代わって訴訟行為をする権限を与えられている人)
- 不動産の名義変更登記を司法書士に依頼する契約
- 所得税の確定申告を税理士に依頼する契約
こうして具体例をみてみると、委任契約の目的である法律行為の意味が、なんとなくでもイメージできたのではないでしょうか。
委任と準委任
法律行為をお願いするのが委任なのね。
じゃあ、法律行為じゃないことをお願いするのは何て言うのかしら?
法律行為ではない事務を委託する場合は準委任と言います。
法律行為ではない事務のことを、法律行為と比較するのに事実行為と呼んだりします。
- 委任契約:法律行為を委託する契約
- 準委任契約:事実行為を委託する契約
準委任契約の例として、次のような契約があります。
- 経営者が公認会計士に会社の財務状況についてアドバイスをもらう契約
- 建築士事務所に建設工事の監理業務を委託する契約
ただ、民法では、準委任についても委任の規定を準用する(民法656条)としているため、両者を区別する必要はあまりなかったりします。
法律行為ではない事務を委託する場合は、厳密には委任ではなく準委任契約と言うんだな、という認識があれば、それで十分です。
委任契約(準委任契約)と請負契約の違い
準委任契約は、法律行為ではない事務を委託するということだけど、請負契約とは何が違うんだろ?
法律行為ではないことを依頼するという点では、どちらも同じじゃないのかな?
実務でも、委任契約や準委任契約とよく比較されるのが請負契約ですよね。
請負契約は、仕事の完成を目的としている契約でした。
委任契約(準委任契約)は、委託された法律行為(事実行為)を行うことが目的となっており、完成品があるかどうかは契約内容になっていません。
例えば、委任契約の具体例であげた「訴訟代理人を弁護士に任せる契約」で考えてみましょう。
仮に、弁護士が訴訟に敗れたとしても、債務不履行とはなりませんよね。成功報酬は支払われないにしても、訴訟代理人としての行為に対して一定の報酬は支払われます。
これに対して、請負契約に該当する建設工事では、原則、仕事が完成しないと報酬は支払われませんし、工事が完成しなければ債務不履行となり、履行の追完や損害賠償を求められることになります。
- 委任(準委任):法律行為や事実行為を契約の目的としており、報酬もその行為に対して支払われる。仕事が成功しなくても債務不履行とはならない。
- 請負:仕事の完成を目的としている。仕事が完成しなければ債務不履行となり、原則、報酬は支払われない。