契約基礎編

売買契約とは?契約不適合に対する買主の4つの請求権を解説

売買

お久しぶりです。もと地方公務員で入札契約担当の部署に7年いたヒジリです。

このページでは売買契約について解説します。

売買契約は、僕たちの日常生活にも関わりが深い契約のひとつです。自治体でも日常的に締結されている契約です。

売買契約とは
  1. 当事者の一方(売主)がある物を相手方に引き渡すことを約束して、
  2. 相手方(買主)がこれに対して代金を支払うことを約束する契約のこと。

(売買)
第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

民法より

スーパーで昼食のお弁当を購入するのも、職員として事務用品や公用車を購入するのも売買契約になります。

そのため「売買契約のことなら、わざわざ勉強しなくてもわかってるよ」と思っている職員さんもいるかもしれません。

ヒジリ

お恥ずかしながら、実際、僕も契約担当2年目まではそう思っていました。

でも、あるとき、僕の勤めていた自治体で売買契約のトラブルが発生したんです。

自治体を買主としてOA機器の売買契約を締結したのですが、納入された備品が仕様を満たしていなかったんですね。

僕は対応方法について相談を受けたのですが、即座に回答することができませんでした。

これは、なんとなく知っているつもりになっていて、売買契約を体系的にきちんと理解していなかったことが原因で

具体的には次のような点です。

  • 売買契約を締結すると、買主と売主には、それぞれどんな義務が発生するのか?
  • 契約の目的物が納入されない、あるいは納入されたけど契約内容を満たしていない場合、買主は売主に対してどのような請求ができるのか?

このページを読まれた人は、上記の点を理解することができるので、いざという時に頼りになる職員さんになると思います。

それではやっていきましょう。

買主と売主の義務

売買契約は、双務契約に分類されます。

ゴミの分類
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双務契約ということは、売買契約を締結することで、契約の当事者である買主と売主がお互いに何かしらの債務が発生するということになります。

買主の義務 ー代金支払い義務ー

買主の義務は、代金支払い義務です

当然ですが、売買契約を締結した買主は代金を支払う義務があります。

さらに支払期限が定められている契約であれば、その期限までに支払わなければなりません。

支払期限が定められていない場合は、民法573条の規定に従い、売買の目的物の引き渡されるのと同時に代金を支払うことになります。

(代金の支払期限)

第五百七十三条 売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定する。

民法より

売主の義務 ー財産権移転義務ー

売主義務は、売買契約の目的物を買主に引き渡すことです

これを財産権移転義務といいます。

売買契約なので、当然といえば当然の義務です。

この当たり前の義務が適正に履行されれば、売主の仕事は終了して、後は代金を受け取るだけということになります。

契約不適合責任 ー買主の4つの請求権ー

悩める職員さん

売主が適正に義務を履行して品物が納入されればいいけど、数量が足りていなかったり、品質が悪かったりして、仕様を満たしていなかった場合はどうしたらいいのかしら?

僕が現役のときに、即答できなかった問い合わせですね。

契約の目的物が契約内容を満たしていない場合には、買主は売主に対して、契約不適合責任として次の4つの請求をすることができます。

  1. 修補や代替物を引き渡す等の履行の追完の請求(追完請求)
  2. 代金減額請求
  3. 損害賠償請求
  4. 契約の解除

順番に見ていきましょう。

追完請求

売主が契約の内容を満たさない目的物を引き渡した場合には、そもそも履行が不能である場合を除いて、修補や代替物を引き渡す等の履行の追完を請求することができます

ヒジリ

普段の生活でも、買い物して不良品だったら交換や修理をお願いしますよね

ただし、不良の原因が買主にある場合には履行の追完を請求することはできません

(買主の追完請求権)

第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

民法より

代金減額請求

売主が契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合には、買主の責めに帰すべき場合を除き、代金減額請求が認められます。

例えば、車を2台購入する契約のはずが1台しか納入されなかった場合、1台分の料金に減額する請求をすることができます。

(買主の代金減額請求権)

第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。

民法より

損害賠償請求

買主は、契約の内容に適合した目的物は引き渡されない場合は、その債務不履行により発生した損害や適正に履行されていれば発生したであろう利益の範囲で売主に損害賠償を請求することができます。

ただし、債務不履行の原因が買主にある場合には損害賠償を請求することはできません

契約の解除

買主は、追完請求しても履行されなかったり、そもそも履行が不能な状態であるときは契約を解除することができます。

ただし、債務不履行の原因が買主にある場合には契約の解除をすることはできません

実務で契約不適合が生じたら

悩める職員さん

4つの請求権があるのはわかったけど、実際に契約不適合が起きてしまった場合、どの請求をしたらいいんだろう?

「契約不適合の内容やその原因によるのでケースバイケース」と言ってしまえば、それまでなのですが、それでは何の手助けにもならないと思うので、僕の経験上から考え方をお話しします。

  1. 目的物が契約不適合だった場合、まずは追完請求を考えましょう。
  2. 追完請求をしても履行の追完がされない場合、あるいは追完請求するまでもなく、適正に履行することが不可能な状況の場合は、次に契約の解除を考えます
  3. 契約を解除するといっても、場合によっては、目的物の一部が既に適正に納品されてることがあります。卵100パックを購入する契約内容だったのに50パックしか納品されていない契約不適合などの場合です。この場合は代金減額請求をして適正な代金に減額しましょう。
  4. 履行の追完による納品の遅れや契約の解除によって、買主に損害が発生している場合、あるいは契約書によって債務不履行の賠償額が予め定められている場合には損害賠償請求を考えましょう。

まとめ ー契約不適合の時は、まず契約書を確認しようー

このページでは、売買契約について次の点を学習しました。

  1. 買主と売主の義務
  2. 契約の目的物が契約不適合だった場合の買主の4つの請求権
①買主と売主の義務

買主の義務:代金支払い義務

売主の義務:財産権移転義務(契約の目的物を買主に引き渡すこと)

②4つの請求権
  1. 追完請求(修補や代替物を引き渡す等の履行の追完の請求)
  2. 代金減額請求
  3. 損害賠償請求
  4. 契約の解除

長々と書いてしまいましたが、このページに書かれている内容は、大抵の場合、契約書にも記載されています。

ヒジリ

契約不適合が生じたら、慌てずにまずは契約書を確認してみましょう。売買契約であれば、大抵の場合、そこに答えが書いてあります。

余談ですが、自治体がする契約は、その自治体全体でみんなが使っている契約書だからといって、さほど中身も確認せずに漫然と契約してしまっている人が多いように感じます。

丸暗記したりする必要はもちろんありませんが、契約締結前に一読して、ざっくりでいいので内容を知っておくと、いざという時に頼りになるスーパーな職員さんになると思います。

お疲れさまでした!