お久しぶりです。もと地方公務員で入札契約担当の部署に7年いたヒジリです
このページでは契約の主体になれる法人について解説します。
法人って厳密にはどういう意味なんだろう?株式会社とは違うのかな?
契約していた法人の代表者が代わったけど変更契約しないといけないの?
こんな職員さんのための記事です。
契約主体に関する記事は、本記事で2回目になります。
第1回目では「契約を締結できるのはどういう人なのか」「自然人とは?」ということについて解説していますので、まだ確認されていない方はそちらから読んでみてください。
契約主体の解説だけでも読んでいただいた方が法人についても理解しやすいです。
法人とは?
民法では権利能力を持つことができる者を「人」と呼んでおり「人」には自然人と法人の2種類があるというお話を前回しました。
権利能力=私法上の権利を得たり義務を負ったりすることができる資格
法人とは、法律の規定により「人」としての権利能力を付与された団体のことをいいます。
僕たち個人のように契約等の法律行為ができる団体ということですね。
ひと口に法人といっても様々な種類があります。
例えば自治体も法人ですし、株式会社や有限会社も法人です。
共通点としては、いずれの法人も法律の規定によらなければ設立することができないということです。
これを法人法定主義といいます。
自治体であれば地方自治法2条に「地方公共団体は、法人とする」という規定がありますし、株式会社であれば会社法に設立方法等が規定されています。
法人制度の意義
団体って、ようは人の集まりなわけだから自然人だけでもよかったのでは?
どうして法人制度があるんだろうか?
法人制度には主に2つのメリットがあります。
- 事務手続きの簡略化
- 個人と法人の債権債務や財産を区別して管理できる
順番にみていきましょう。
事務手続きの簡略化
一点目は事務手続きが簡略できるということです。
例えばA社とB社がある取引について契約書を取り交わそうとしている場面を想像してみましょう。
両社に権利能力が無いとなると、お互いの会社を構成している人が全員連名で契約書に記名押印する必要がでてきますから、事務手続きが非常に煩雑になります。
権利能力を有している法人であれば法人自身で契約することができますから、法人を代理する代表者が記名押印すれば済むわけです。
個人と法人の債権債務や財産を区別して管理できる
二点目は会社を構成する個人とその会社自身である法人の債権債務や財産を区別して管理することができるということです。
例えばC株式会社の代表取締役であるDさんが個人的に使用する車を購入し、ディーラーに対して500万円を支払う債務を負ったとします。
このときDさんが代表取締役だからといって、C社に対して500万円を請求することはできません。
500万円の支払いはDさんが個人として締結した売買契約による債務であり、法人が負った債務ではないからです。
逆のケースも同様です。法人の債務については、法人の構成員の個人財産に対して請求することはできません。
C社の代表取締役がDさんだったとしても、法人であるC社と自然人であるDさん個人は別人であるということです
ただし一部例外もあり、法人の種類によっては会社が返済できなかった債務を社員が追うケースもあります。
法人の代表
法人が権利能力を有していて契約できることはわかったけど、法人はどうやって契約するの?
個人みたいにサインしたり印鑑押したりできないわよね
たしかに法人に実体はありません。
そのため契約や請求といった対外的な行為は、法人を代理して自然人が行います。
この法人を代理することを代表といい、代表する自然人を代表者といいます。
代表者には法人の事業活動全般について代理権が認められています。
代表するのが誰なのかは法人の形態によって様々です。
例えば株式会社であれば取締役や代表取締役が、一般社団法人であれば理事や代表理事が代表することになります。
契約書に「〇〇株式会社」だけではなく「〇〇株式会社 代表取締役 〇〇〇〇」とまで記載するのはこのためです
皆さんが実務で法人と契約する際は、取引相手に代理権があるかどうかの確認が重要です。
代理権の無いものと締結した契約は、無権代理といって無効となる可能性があるからです。
よくある問合せ 相手の代表者が代わったけど契約書って変更するの?
最後に復習として、次のような問合せについて考えてみたいと思います。
ここまで読んでくれた人なら、きっと回答できるはずです!
契約相手の代表者が契約を締結してから1週間後に交代になったんだけど、契約書も変更しないといけないのかな?
契約担当だったころ、他部署から非常に多くあった問合せの1つです。
契約書を変更する必要はありません。
代表者は法人の代理をしているだけで、契約の相手方はあくまで法人です。
代理をしている代表者が代わったとしても、契約の相手方である法人自身は同一人物ですから、契約の効力には影響ありません。
お疲れさまでした!