お久しぶりです。もと地方公務員で入札契約担当の部署に7年いたヒジリです。
このページでは申込みの誘引について解説します。
契約の勉強をしていると申込みの誘引っていう言葉がでてくるんだけど、どういう意味なんだろ?
申込みとは違うのかな?
こんな職員さんのための記事です。
契約が成立する仕組みを法律的に理解している人でも「申込みは知ってるけど、申込みの誘引は知らないな」という人も多いと思います。
申込みの誘因を知ることで、契約が成立する仕組みをより理解できるようになります。
自治体職員さんであれば一般競争入札や指名競争入札、随意契約といったお馴染みの調達方法の仕組みがよりわかるようになるはずです。
それではやっていきましょう。
申込みと承諾とは? ー契約成立の仕組みー
上記の記事を読んでくれている人には復習になりますが、申込みの誘引を理解するために、まずは契約が成立する仕組みをおさらいしましょう。
契約とは、互いに対立する2個以上の意思表示が合致することによって成立しました。
そして意思表示には申込みと承諾の2つがありました。
初めての人からしたら「何の呪文ですか?」という感じだと思うので、具体例をみてみましょう。
Aさん(買主)がBさん(売主)と中古車の売買契約について、値段の交渉をしているとします。
税込300万円であれば、その中古車買います
わかりました。税込300万円でAさんに売りますね。契約成立!
この場合、Aさんの「300万円で買います」が申込みの意思表示、Bさんの「300万円でAさんに売ります」が承諾の意思表示にあたります。
買主と売主という互いに対立する2つの意思表示が合致したことで契約が成立したことになります。
- 申込み:相手方の承諾があれば契約を成立させますという意思表示
- 承諾:申込みにについて了解し契約を成立させる意思表示
申込みの誘引
申込みの誘引とは? ー申込みとの違いー
お待たせしました お待たせし過ぎたかもしれません。
申込みと承諾を理解したところで、ようやく申込みの誘引の話です。
「申込み」と「申込みの誘引」は、一見どちらも申込みという言葉が使われているので、似たようなものかなと感じるかもしれませんが、法律的な意味は異なります。
申込みの誘因とは「申込みしてきてください」と申込みの誘いをかけるもの。言葉どおり、申込みを誘引するもの
申込みは、承諾の意思表示があれば契約が成立したのに対して、申込みの誘引は、意思表示があっても契約は成立しません。
あくまで申込みの誘引は「申込みしてきてください」と誘いをかけているにすぎないからです。
契約の相手方が「申込みの誘引」に誘われて「申込み」をして、それに対して「承諾」をすることで、ようやく契約が成立するんです。
- 申込みは、相手方の承諾の意思表示があれば契約が成立する。
- 申込みの誘引は、意思表示があっても契約は成立しない。あくまで申込みを誘うものである。
申込みの誘引の具体例
先ほどのAさんとBさんの中古車の売買契約の例で考えてみましょう。
Aさんは、いきなりBさんのところに行って
税込300万円であれば、その中古車買います
と言ったわけではなく、前日に新聞の折り込みでこんなチラシを見ていたとします。
Bさん所有の2020年製の○◯○車を売ります!
金額は直接Bさんとの交渉次第。車の状態は現地で直接確認してください。
このチラシが、まさに申込みの誘引にあたります。
仮に、このチラシが「申込みの誘引」ではなく「申込み」だとしたらどうでしょうか?
チラシを見たAさんが「チラシを見ました。買います」とBさんに言ったら、それが承諾になり契約が成立することになってしまいます。
車の値段は交渉次第なのに、Bさんが早いもの順で誰とでも契約するつもりでいるとは考えられません。
この場合、チラシは申込みではなく「申込みをして欲しい」と誘う申込みの誘引であることがわかります。
まとめ
このページでは申込の誘引について解説しました。
申込みの誘因とは「申込みしてきてください」と申込みの誘いをかけるもの。言葉どおり、申込みを誘引するもの
申込みと申込の誘引の違いは次のとおりでした。
- 申込みは、相手方の承諾の意思表示があれば契約が成立する。
- 申込みの誘引は、意思表示があっても契約は成立しない。あくまで申込みを誘うものである。
「申込みと承諾」だけではなく申込みの誘引まで理解できれば、契約成立の仕組みについてはバッチリですね!
お疲れさまでした。