お久しぶりです。もと地方公務員で入札契約担当の部署に7年いたヒジリです。
このページでは請負契約について解説します。
請負契約ってよく聞くけど、どういう意味なんだろ?
どんな特徴があるんだろう?
こんな職員さんのための記事です。
請負契約は、自治体でも公共工事や工事のための設計業務等、非常に多く利用されている契約形態のひとつです。
請負というフレーズは民法だけでなく、地方自治法や印紙税法等にも登場します。
そのため実務の中では「この契約は請負に該当するのかな?」と悩まされる場面が、非常に多く登場するんですよね。
お恥ずかしながら、僕も頻繁に悩んでいました・・・
そこで、このページでは請負の特徴について、できるだけわかりやすく解説していきます。
それではやっていきましょう。
請負とは?
請負契約は、仕事を完成させることを目的として締結される契約です。
①請負人(仕事を引き受けた人)がある仕事の完成を注文者に約束して、
②注文者(仕事を依頼した人)は、仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約
請負は、典型契約に分類されますから民法にその規定があります(民法632条から642条)
(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
民法より
請負は、仕事の過程ではなく、仕事の結果にフォーカスしています。
例えば、報酬1,000万円のシステム開発をA者はエンジニア10人で100時間かけて完成させたとします。
ところがB社は、全く同じ仕様のシステムをエンジニア2人で10時間で完成させてしまいました。
このとき、A社が多くの人員や時間を使ったからといって、報酬が増えたりすることはありません。
仕事の結果だけに注目すれば、A社とB社は何も変わらないからです。
どれだけ努力していても、結果こそがすべて!
という、ある意味、残酷なのが請負契約です。
逆に言うと、契約内容の中で特に注文者からの指示がなければ、仕事を完成させる手段や方法というのは請負者の自由になります。
報酬の支払時期
請負の報酬は、原則として、仕事の目的物の引き渡しと同時に支払います。
(報酬の支払時期)
第六百三十三条 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
民法より
「仕事の完成」は報酬をもらう前に終えていなければならず、完成した後の目的物の引き渡しと報酬の支払いとが同時履行の関係に立つということです。
ただし、物の引き渡しが不要な請負契約であるときは、雇用契約における報酬の支払時期に関する民法624条が準用されるので、約束した仕事が終わった後に報酬を請求することになります。
(報酬の支払時期)
第六百二十四条 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
民法より
請負契約は、仕事の完成を目的としている契約なのに、引き渡す物が無いなんてことあるのかしら?
誤解されがちですが、建設工事やシステム開発のような仕事の完成が有形なものだけが請負なのではなく、無形のものも請負に該当します。
無形の請負とは、例えば、音楽の演奏や講演、建物の清掃、運送契約などです。
報酬の支払時期の例外
請負の報酬は、仕事を完成させてからということだけど、途中まで出来上がってても1円ももらえないの?
仕事が完成しない限り、請負人は1円ももらえないのかというと、実はそうではありません。
先ほどの「報酬は、仕事の目的物の引き渡しと同時に支払われる」という民法633条の規定は、あくまで原則です。
民法634条による例外
民法634条では、仕事が完成しなかった場合の報酬について規定しています。
(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
第六百三十四条 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。
民法より
原文のままだと理解しづらいと思うので、噛み砕いてみていきましょう
まず、民法634条が適用されるのは、次の2つの場合です。
- 注文者のせいではない理由で、仕事を完成できなくなったとき。
- 請負契約が仕事の完成前に解除されたとき。
上記2つのどちらかに当てはまり、しかも、請負人が既にした仕事のうち、可分な部分の給付によって、注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなすこととしています。
この場合、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます。
例えば、皆さんの住んでる自治体が、道路100メートルを舗装する土木工事を発注しました。ところが請け負った会社は、資金繰りが苦しくなり50メートルまでしか舗装できなかったとしましょう。
当初の約束である100メートルこそ完成していませんが、途中までの50メートルについては、道路として利用することができますし改めて工事をし直す必要もありません。
そのため注文者である自治体は、その分の利益を受けることになりますから、請負人に対して50メートル分に対する報酬は支払わなければなりません。
契約の特約による例外
もう1つの例外として、契約の中で特約を設けている場合です。
特約を設けることで、民法633条の原則を修正し完成前でも支払いをすることができます。
例えば、自治体の建設工事請負契約書の中には前金払の規定があります。
建設工事では、材料費や労働者の確保など、工事を始める前にも多額の費用がかかります。それなのに工事が完成するまで1円も払わないとなっては、請負人の負担が大きすぎることから、前金として一定額を完成前に支払うことができるようにしておく特約です。
まとめ
ここまで請負の特徴についてみてきました。
①請負人がある仕事の完成を注文者に約束して、
②注文者は、仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約
請負は仕事の完成を目的としているので、原則、報酬は目的物の引き渡しと同時に支払われます。
ただし、次のような例外がありました。
- 民法634条による例外
- 契約の特約による例外
請負は、契約の目的が有形なものだけではなく、音楽の演奏や講演、運送契約などの無形のものも含みますので誤解のないようにしましょう。
自身が担当している契約が請負なのかどうか迷ったときは、報酬の対象が仕事の結果なのか、それとも仕事の過程なのかに注目してみてください。
お疲れさまでした!